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最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)294号 判決 1964年6月26日

上告人

石井三千三

右訴訟代理人弁護士

高畠春二

被上告人

日本不動産株式会社

右代表者代表取締役

中村元嘉

右訴訟代理人弁護士

吉井規矩雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高畠春二の上告理由について。

借地法一〇条は、借地権譲渡につき土地賃貸人の承諾があれば適法に従来の借地権を取得しうる地位にある第三者が、賃貸人の不承諾のため借地権者となることができない場合に、建物保護のために第三者に買取請求権を与えた規定である。従つて、同条の適用があるのは、賃貸人の承諾があるならば第三者において従来の借地権を取得しうる場合、換言すれば借地権の存続中において第三者が建物等を取得した場合であることを要するものといわなければならない。原判決の引用する第一審判決の確定した事実によると、本件土地の賃借人である上告人の所有する地上建物が滞納税金のため公売に付され、訴外草野喜満太がこれを買得したので、本件土地の賃貸人中村繁は昭和二八年五月九日上告人に対し借地権の無断譲渡を理由として賃貸借契約を解除した後である同年九月深代守三郎が右地上建物の所有権を取得したというのであるから、右深代に買取請求権の存しないことは原判示のとおりであつて、借地法一〇条の解釈を誤つたとの論旨は理由がない(昭和二九年六月一七日最高裁判所第一小法廷判決、最高裁判所裁判集民事一四号四四一頁参照)。所論引用の昭和九年四月二四日大審院判決は、借地権が消滅しない間に地上建物の所有権が転々としても、最後の所有者に買取請求権がある旨を判示するものであり、また昭和一四年八月二四日大審院判決は、地上建物取得当時敷地賃借権が存すれば買取請求権が発生し、その後になされた民法六一二条による解除によつては消滅しない旨を判示するものであつて、いずれも事案を異にし本件に適切でない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 城戸芳彦 石田和外)

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